みなさんは、風邪を引いたことがありますか?
「人生で一度もない」という方は、ほとんどいないのではないでしょうか。
そして風邪になったときに市販の風邪薬を飲んだり、病院で「咳止め」「解熱剤」「抗生物質」などを処方してもらったりした経験があるのではないでしょうか。
最近は知っている方も多くなってきましたが、実は抗生物質は風邪を治したり、治りを早くしてくれるものではありません。
それどころか、抗生物質を始めとした風邪のときに処方される薬は、治りを遅くしている可能性があります。
なぜ、治りが遅くなるのか?遅くなるのになぜ、薬が処方されるのか?
今回は、風邪を引くプロセスと有効な治療方法についてお伝えしていきたいと思います。
目次
そもそも、風邪とは?
「風邪をひいた」「風邪気味」など、一般的にいわれている「風邪」は、正式には「かぜ症候群」と言います。かぜ症候群は、いわゆる上気道と下気道に起こる急性炎症の総称で、上気道は鼻・のど・喉頭(こうとう)、下気道は気管・気管支を指します。風邪の原因の約80〜90%はウイルスです。かぜ症候群は大きく「普通感冒」と「インフルエンザ」のふたつに分けられます。
(ヘルスケア大学より一部引用)
要点をまとめると
ということになります。
この「ウイルス性」というところが今回の大切な鍵となります。
風邪の症状はすべて、異物を排除しようとする大切な防御反応
風邪の症状として、咳、くしゃみ、痰、鼻水、喉の痛み、発熱などがあります。
これらは全て、自分の身体が病原体と戦っている証拠です。
病原体を排除して身体を守るために、自分の免疫システムが働いてくれています。
症状の一つ一つに、理由があります。
症状を抑えようとすることは、風邪の治りを遅くすること
咳止め、解熱薬などは、出ている症状を抑える、いわゆる「対症療法」のお薬です。
これは、敵を倒すために、せっかく兵隊が爆弾を詰めて火を付けたところに、水を差して消すような行為です。
結果として、その分戦いは長引きます。
抗生物質は「細菌」に効くが「ウイルス」には効かない
「細菌」と「ウイルス」は違うものです。
例を挙げながら説明すると、
細菌は、「細胞を持つ」「微生物」で、細胞分裂することで自分で増殖することができる存在です。
イメージとしては、設計図があり大工さんがいて家もある状態です。そして新たな材料(繁殖環境)を手に入れることでさらに増築のペースが上がります。土地(人体)を勝手に借りてどんどん新しい家を建てていきます。
ウイルスは「細胞を持たない」「独自の遺伝子(DNA、RNA)の情報をもつもの」で、人や動物など生物の細胞を宿主にすることではじめて増殖することができます。
イメージとしては、大工さんや家の材料がなく設計図のみの状態です。大工さんと材料が揃うことで始めて家を建てることができます。大工さん(人間の細胞)を無理やり雇い、元々あるマンション(人体)の中に自分の部屋(コピー)をどんどん作らせます。
どちらも広く「バイキン」として捉えられていることがありますが、細菌とウイルスは構造が全く違う別ものです。
そして抗生物質は細菌の構造に着目し、細胞壁を壊したり、細胞壁の合成を阻害したり、細胞のタンパク質合成を阻害したりして細菌の増殖をブロックする薬です。
警察(抗生物質)が、不正な建造物や欠陥住宅(細菌)を摘発して家の壁を壊したり、壁を治すのを邪魔したり、無許可で家を立てた責任者や大工さんを捕まえるイメージです。
一方それがウイルスの場合、外壁は元々あったマンションのまま、大工さんも元々いた人達。一部の部屋を改造されても、抗生物質には不正な設計図を持ち込んだ犯人をなかなか見つけられません。
ウイルス性の風邪で抗生物質を服用しても、退治する相手が見つからないということになります。
人はもともと、たくさんの細菌と共生している
人の体には「常在菌」というものがあり、私たちは生まれたときからたくさんの細菌とともに生きています。
お腹の「善玉菌」「悪玉菌」など腸内細菌が無数にあることは知られていますが、口の中や皮膚、女性の膣にも常在菌が住み着いており、別の有害な細菌が侵入・増殖するのを防いでくれています。
なので、有害な細菌がいないのに抗生物質を服用すると、身体を守ってくれる常在菌も殺してしまうことがあります。
抗生物質を飲むと下痢になりやすいです。これは腸内細菌が壊されることにより、消化吸収力が低下したり免疫力が低下することで起こるものです。
じゃあどうして、ウイルス薬を出さないの?
ウイルス性なら、「ウイルスに効く薬を出せばいいじゃん!!!!」と思いませんか?
細菌には無数の種類がありますが、大まかな分類と構造パターンがあります。
抗生物質は構造パターンが一致する細菌を壊してくれるので、原因菌が分からなくても攻撃してくれます。その分、攻撃して欲しくない常在菌も攻撃してしまいます。
ウイルスの場合、一つ一つ遺伝子が異なります。ウイルスを退治するには一つ一つのウイルスの遺伝子構造に合わせてピンポイントでアタックする必要があります。
先ほどの細菌とウイルスの話の続きで例えると、犯人(ウイルス)の氏名や住所など詳細情報が分かってはじめて逮捕状を出すことができるのです。
なので、違う薬では基本的に効果がありません。
風邪の原因となるウイルスは複数ありますが、原因ウイルスを特定するのは困難です。
なぜなら、もし原因を特定するのであれば「血液検査」「病変部分の細胞の採取」など検査が必要になるからです。
それは私たち患者の身体とお金の負担になります。
そして、検査して結果を待つのには3日~1週間はかかります。
1週間もすれば風邪・・・自然に治ってきますよね。
そう。原因を特定してからウイルス薬を出そうとしても、大抵それまでに治るんです。
それでも抗生物質が処方されるのはなぜ?
風邪を引いたときに病院に行くのは、精密検査をして原因を特定してキッチリ治して欲しいから・・・ではないですよね。
「今、辛いのをなんとかして欲しい」からですよね?
そして「抗生物質をもらえば早く治る」と思っていませんでしたか?
そしてそんな方は、病院に行ったのに薬をもらえないと、不満を感じませんか?
抗生物質や症状を抑える薬は、昔から処方されてきました。
昔は風邪の原因が解明されておらず、抗生物質が処方されていたのかもしれません。
ですが今は、多くの医師が「風邪には自然治癒が一番」だと言っています。
それでも、長年風邪で抗生物質を飲んできた方は「風邪をひいたみたいだから、抗生物質を下さい」と求めてくることがあります。
本当は薬が不要なのにも関わらず、「薬を処方してくれないと不安・不満」「あの病院は薬も出してくれない」と苦情が出ることもあります。
悲しいことですが、患者さんの満足度のために薬が処方される・・・ということが今の日本では存在します。
風邪の一番の特効薬、それは・・・
ここまで読んで頂いてもうお気づきかもしれませんが、風邪に一番効果的なのは自然治癒です。
「長引いてでも、症状を緩和したい・・・」
「無理をしてでも今、やらなければならないことがある」
何がなんでも症状を抑えたい・・・そんなときは、薬を選択するのも一つの方法です。
ですが、一番の特効薬は自分自身に備わっている「免疫力」「自然治癒力」です。
私たちの免疫が病原体を倒してくれます。
抗生物質や症状を抑える薬は、免疫と病原体の戦いに水を差してしまいます。
風邪を早く治したいのであれば
「安静にしている」
「脱水にならないよう水分を補給する」
など、体力を温存し自分の免疫力と病原体の戦いが終わるのを待つのが一番です。
まとめ:病院が必要か否か?自分の身体に問いかけて、必要な対応を選ぼう
戦って勝てないレベルの病原体が身体に入った場合には、強い症状が起こります。その場合には、早くに原因を特定して必要な治療を行う必要があります。
特に免疫が未熟なお子さんや免疫力の低下している高齢の方の場合は、風邪でも命に係わることがあります。状況に応じて早めの受診と検査、治療が望まれます。
ですが普段は健康でご自分の身体と何十年も付き合っている方はまず、ご自身の身体のサインをよく観察してみてください。
なんとなく喉が痛い、鼻水が出る、少しだけ熱っぽい・・・そんなときは?最近会った人に気になる症状はいなかったか?インフルエンザの流行の時期?「いつもの風邪」なのか、「タイミングや症状が不自然」「危険や違和感を感じる」症状なのか?ある程度判断できると思います。
決して「病院に行くな」ということではありません。風邪の治し方や薬の効果を知ったうえで、ご自分に必要な方法を選んでいただければと思います。
この記事は参考になりましたか?今まで知らなかったという方、風邪のときは薬を飲んだほうがいいと思っていた方に、正しい情報を知る機会になっていれば幸いです。
明日、今日より健康になりますように。