お勉強大好きナース、毒茄子です。
勉強用コーナーは看護学生、医療系学生向けにお送りします。
「手元に教科書がないけどちょっと検索して見たい情報がある」
「レポートにまとめるときに参照したい」
といったときに教材・ノート代わりに活用して頂けるものを目指しています。
※スマートフォンからの方へ。表が横長のため、見づらいときは横向きにすると見やすくなります。
今回は「アルコール中毒・依存症」について。
アルコール依存性とは
・アルコール依存性は、麻薬や覚せい剤などによる障害と同様に、物質関連障害に分類される
・アルコール依存は、身体依存・精神依存・耐性から成り立つ
・患者は病識に乏しく、入院など治療に抵抗を感じていることが多い
アルコール依存症状
身体依存
・アルコールの摂取をやめると、身体機能のバランスが崩れ、離脱症状を示す
発現時間(最終飲酒後) | 症状 | 対応 | |
①早期離脱症候群 | 数時間~20時間後がピーク | ・不安、焦燥感 ・手指のふるえ(振戦) ・交感神経の興奮過剰(自律神経症状) → 頻脈、発汗過多、血圧上昇など ・悪心・嘔吐 ・幻覚(一過性) ・けいれん発作 |
治療をしなくても、徐々に軽減していく |
②後期離脱症状 | 72時間~数日間 | ・振戦せん妄 早期から持続する振戦・自律神経症状に加え、意識変容をきたしたもの。 ・幻視(小動物や小人がみえる)のため、追い払う動作などをする ・混乱の中で日頃やりなれた動作を繰り返す(運転動作など) ・幻覚は夜間に目立ち、不穏状態となる |
精神依存
・飲酒への強い願望(渇望)
・泥酔に至るまでの多量の飲酒を繰り返す(飲酒行動の統制不能)
・すべての関心が飲酒に集中する(飲酒中心性)
・飲酒によって身体疾患・家族問題・社会問題が生じても飲酒をやめられない(有害な飲酒に対する抑制の喪失)
耐性
・同じ量のアルコールを続けて摂取しているうちに、次第にその効果が減弱していくこと
→満足感を得るためにアルコール摂取量が増加していく
アルコール依存症の患者に起こりやすい症状
・肝障害(脂肪肝、肝炎、肝硬変)
・慢性膵炎
・脂質異常症
・アルコール精神病(アルコール性認知症、幻覚症、嫉妬妄想など)
・ウェルニッケ脳症/コルサコフ症候群
→ アルコール分解にビタミンB1が大量消費され、ビタミンB1欠乏により引き起こされる。
*ウェルニッケ脳症: 突然の意識障害、眼球運動障害、失調性歩行
*コルサコフ症候群: ウェルニッケ脳症の進行による。健忘、見当識障害、作話など
・低栄養・脱水
→ アルコールの利尿作用、食事摂取不足、アルコール分解のためのビタミン消費などが原因となる
アルコール依存症の治療
・離脱症状の予防: 抗不安薬の投与(ジアゼパムなど)
・後期離脱症状への対応: 抗精神病薬の投与(ハロペリドール、リスペリドン)
・ウェルニッケ脳症/コルサコフ症候群、低栄養への対応: ビタミンB1の補充、輸液など
・断酒への指導: 何十年断酒をしても、一口お酒を飲むだけでアルコール依存に戻ってしまう
・断酒の補助療法: 抗酒薬の服用(シアナミド[シアナマイド]、ジスルフィラム[ノックピン]など)
→服用していると、少々の飲酒で悪酔いする
治療の四段階
治療過程 | 治療 |
①導入期 | 家族を教育したり、職場、内科医の協力を得て、アルコール関連障害(肝障害、家庭内不和、精神症状など)に対処し、本人の病気への理解、治療への動機づけを得られるようにする |
②解毒期 | 1~2週間入院し、離脱症状や栄養障害へベンゾジアゼピン系の抗不安薬や、ビタミンB1、輸液を投与する。解毒後は断酒を継続しながら、心理的・社会的リハビリテーションを図る |
③積極的治療期 | 社会生活技能の向上を目標とする。アルコール関連障害の治療を行うとともに、精神依存への対処として集団精神療法、AA・断酒会など自助グループへの参加、断酒薬の投与、作業療法を行う。 |
④断続的治療期 | 断酒の継続・飲酒に頼らないストレス対処行動の獲得、家族関係の回復、生活の安定化が目標となる。断酒会・AA、抗酒薬の投与、作業療法が引き続き行われる。 |
アルコール依存症患者の看護
・離脱症状は時間が経てば軽減していくことを説明する
・離脱症状をはじめとする身体症状・精神症状の観察・早期発見に努め、異常発見時はすみやかに医師へ報告
・本人への働きかけのほか、家族も含めて治療・疾患への理解への働きかけを行う
・自助グループ(AA、断酒会など)の情報提供、参加促し
・家族のためのセルフヘルプグループの紹介
・自分の飲酒経験の振り返りができるよう集団精神療法への参加を促し、参加時に発言しやすい雰囲気作りを行う
・治療は「断酒」が原則であり、少量の飲酒でもとの状態に戻ってしまうことを説明する