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【看護学生向】周手術期、ムーアの分類、術前術後のアセスメントと看護

「忙しい看護学生さんの勉強を少しでも楽にできたらいいな」

「事前学習・実習・国家試験対策に役立つ情報が気軽に調べられたらいいな」

そんな思いから「毒茄子(毒ナース)」は生まれました。

 

毒茄子の勉強部屋では、

「手元に教科書がないけどちょっと検索して見たい情報がある」

「レポートにまとめるときに参照したい」

といったときに教材・ノート代わりに活用して頂けるものを目指しています。

 

今回は周手術期における身体の変化やアセスメント、ムーアの分類についてまとめました。

※スマートフォンからの方で表が見づらい方は、横向きにしてみてください。

 

ムーアの分類

ムーアの分類は、侵襲による生体反応をまとめたものです。

 

臨床症状 術創 内分泌 代謝反応
第Ⅰ相
傷害期
(術後2~4日)
・周囲への無関心、傾眠傾向
・頻脈傾向(出血による)
・体温上昇(+1℃)
・血圧上昇
・腸蠕動減弱
・体重減少
・脈拍・体温正常
・創の癒合、張力は弱い
・コラーゲン生成開始
・免疫系の活性化
・細菌汚染と毒性の低減
・カテコラミン↑
・副腎皮質ホルモン↑
・コルチゾール↑
・好酸球↓
・アルドステロン↑
・タンパク質異化亢進
・尿中排泄K↑ Na↓ Cl↓
・窒素バランス負
・BUN↑
・血糖↑
・尿量↓
・不感蒸泄↑
(抗利尿、水分保持傾向)
第Ⅱ相
転換期
(術後4~7日)
・周囲への関心が戻る
・脈拍・体温正常
・腸蠕動回復
・疼痛軽減・消失
・創癒合、張力完成
・コラーゲン生成ピーク
・副腎皮質ホルモン正常化
・コルチゾール正常化
・タンパク質合成開始
・窒素バランス負→正
・BUN↓
・尿中排泄Na↑
第Ⅲ相
同化期
(術後1週~数週)
・バイタルサイン安定化
・食欲回復
・便通の正常化
・赤色瘢痕化
・創傷治癒完成
・ステロイドホルモン正常化 ・タンパク質合成正常化
・窒素バランス正
・筋組織の再合成
第Ⅳ相
脂肪蓄積期
(術後数週~数ヶ月)
・体力の十分な回復
・体重増加
・コラーゲン再構築
・白色瘢痕化
・変化なし ・脂肪合成

 

術前術後アセスメント

1.術前アセスメント

観察・情報収集項目 検査方法 なぜ見るのか
①呼吸機能 ○呼吸器疾患の既往
(気管支喘息、肺気腫、COPD等)
○喫煙歴
○胸部X線
○肺機能検査
○動脈血ガス分析
*全身麻酔による手術では、筋弛緩薬や麻酔薬の投与により呼吸が抑制され、換気量の減少、酸素消費量の増加が生じやすい。
*全身麻酔による気道分泌物の増加、術後の創痛や咳嗽反射の低下による喀痰困難などのために、肺合併症(肺炎・無気肺など)を起こしやすい。
②循環機能 ○循環器疾患の既往
(虚血性心疾患、高血圧、不整脈等)
○血圧
○脈拍
○心電図
○心エコー
○胸部X線
(心肥大、心胸郭比)
*全身麻酔は心拍出量を減少させる。さらに二酸化炭素の蓄積や心筋の酸素欠乏が起こりやすい。そのため、心筋の収縮力が低下し、血圧低下や不整脈を起こしやすい。
③腎機能 ○腎疾患の既往
(慢性腎炎、ネフローゼ症候群等)
○尿量、尿比重、尿たんぱく、尿糖の有無
○浮腫
○血液検査
(BUN、Cr、Na、K等)
○尿検査
(尿たんぱく、尿糖)
*手術侵襲に伴う水・電解質のアンバランス、酸塩基平衡の異常、循環血液量の不足などにより、術後急性腎不全などを生じやすい。
④栄養・貧血 ○食事摂取量
○貧血症状の有無、程度
○身長、体重、BMI
○年齢、性別
○血液検査
(RBC、Hb、Ht、TP、Alb)
*栄養状態不良や貧血があると、創傷治癒遅延をきたしたり感染を起こしやすい。
⑤血液凝固能 ○出血傾向 ○血液検査
(PLT、PT、APTT)
○出血時間
*血液凝固能の低下は、術中・術後の出血リスクを高める。
⑥肝機能 ○肝疾患の既往
(肝炎、肝硬変、感染症等)
○皮膚黄染の有無、程度
○飲酒歴
○血液検査
(AST[GOT]、ALT[GPT]、T-Bil、Alb)
○腹部エコー
*肝機能が低下していると、解毒能低下による麻酔からの覚醒遅延、血液凝固能の障害による出血量の増加、創傷治癒遅延などが生じやすい。
⑦内分泌機能 ○内分泌疾患の既往
(糖尿病、バセドウ病等)
○血液検査
(BS、HbA1c等)
○尿検査
(尿糖、尿ケトン体)
*糖尿病があると創傷の縫合不全、治癒遅延を引き起こす。

 

2.術後アセスメント、合併症リスク

合併症 根拠 観察項目
①呼吸器合併症
・無気肺
・肺炎
 全身麻酔の影響により、呼吸運動が抑制され、換気量の減少が生じやすくなる。また、麻酔時の気管挿管により、気道の粘膜が刺激され痰などの分泌物が増加する。これに、呼吸運動や気道の絨毛運動の抑制、術後疼痛による喀痰困難などが加わり、気道内に痰が貯留しやすい状態になる。貯留した痰が末梢の気道を閉塞し肺胞が虚脱する結果、無気肺を起こす。肺炎は、無気肺が移行した場合や、胃内容物、気道分泌物などの誤嚥により生じる。喫煙歴があると気道分泌物が増加し、呼吸器併症リスクが高くなる。 ○呼吸状態(回数、深さ、左右差)
○胸郭の動き
○SpO2
○痰の性状、喀出状況
○痛みの程度
○表情
○チアノーゼの有無
○末梢冷感
○胸部X線
②循環器合併症
・循環動態の変動
・後出血
麻酔からの回復に伴い、血管が拡張し、循環動態が回復する。手術後の止血操作が不十分な場合、術後24時間は特に後出血が起こりやすい。出血が多い場合は血圧が低下し、ショック状態を起こすことがある。血圧が高い場合は出血を助長する。 ○血圧
○脈拍
○創部の出血、皮下出血の有無
○発赤、熱感、腫脹、疼痛の有無
○ドレーンからの排液の性状と量
○IN-OUTバランス
○意識レベル
○血液検査(Hb、RBC、Ht)
③消化器合併症
・腸閉塞(イレウス)
術直後は、全身麻酔の影響で消化管の蠕動運動が低下する。術後24~72時間で蠕動運動は回復するが、麻酔薬の影響や、術後の疼痛に伴い、離床が進まないなどの理由から、蠕動運動の回復が遅れるとイレウスを起こす恐れがある。 ○腸蠕動運動音
○腹部膨満の有無
○腹痛の有無
○排ガスの有無
④創部からの出血
・縫合不全
・感染
創部に起こる合併症は、時期によって異なる。
[術後1~2日目] 出血
[術後3~4日頃] 創感染
[術後2~14日] 縫合不全
創部のほかに、発熱やWBC、CRPなど血液検査の結果の確認も必要。吻合部における血流障害や過度な緊張、感染は吻合部の離開の原因となる。皮膚の状態やTP、Albといった血液検査結果を確認し、創傷治癒遅延の要因である低栄養のアセスメントが必要である。
○創部の出血、皮下出血の有無
○発赤、熱感、腫脹、疼痛の有無
○ドレーンからの排液の性状と量
○発熱の有無
○血液検査(WBC、CRP、TP、Alb)
⑤血栓、塞栓
・深部静脈血栓症
・肺血栓塞栓症
 全身麻酔や臥床安静により血流が停滞することで、深部静脈血栓症を発症するリスクが高くなる。術後初めて立位になる際は、血流の変化により深部静脈血栓が遊離して肺動脈に流入し、肺血栓塞栓症を発症するリスクが高い。 [深部静脈血栓症] ○下肢の腫脹、緊張感、痛み
[肺血栓塞栓症]
○呼吸状態(呼吸困難感、頻呼吸の有無)、胸痛の有無

 

3.心理的アセスメント

観察・情報収集項目
①心理状態 ○手術の理解度
○手術に関する疑問の有無、内容
○手術に対する不安や緊張の有無、程度、不安の具体的内容
②家族関係・サポートシステム ○キーパーソン
○家族との関係
③家族・社会的役割行動 ○家族内での役割
○経済状態
○職業(社会的活動)
④信念・価値観 ○病気や手術の受け止め方
○入院前の生活習慣

 

 

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